つながりを力に、鳥取の奥深さを届ける
『県外にいても、地元の力になりたい』
『自分の地域の奥深さを、もっと知ってほしい』
そう考える人は少しずつ増えているように思います。
今回お話を聞いたのは、『鳥取がもっと好きになる』をコンセプトに鳥取最大級のローカルメディア『とっとりずむ』を運営する酒本勇太さん。
一度は地元を離れ、都市や海外に出たこともありますが、今では『とっとりずむ』の代表として、地域の奥深さを取材しています。鳥取でメディアを運営するおもしろさや、地元にいなくても力になれること…をお聞きしました。
地元の人しか知らない、ローカル情報を届けたい
酒本:「とっとりずむでは、鳥取のグルメ、観光スポット、人の紹介記事を中心に掲載しています。鳥取に関する情報はもちろんなんですが、地元の人しか知らないようなローカル情報の発信にこだわっていますね。」
酒本 勇太/岩美町出身1990年生まれ。鳥取の地域情報ブログ「とっとりずむ」代表。2019年8月に月間50万PVを達成。「鳥取の魅力を再発見!」をコンセプトに鳥取の飲食店や観光地などを日々発信中。
酒本:「大手の旅行メディアや観光雑誌には、どのメディアも同じような場所や情報が載っていて、県外の人が見る鳥取の姿は、砂丘、大山、水木しげるロードっていう面しか見えづらいと思うんです。鳥取に住んで運営しているとっとりずむだからこそ、外部の人にはわからないニッチな情報を発信しています。」
2015年12月に開始し、今では月間50万PVを達成するほど成長したとっとりずむ。現在は1100本の記事が掲載されていますが、旬な情報を載せ続けるために、情報を取りに行く姿勢を大切にしていたそう。
掲載情報は、足を使って取りに行く
酒本:「立ち上げ当初は自分の足でお店をまわったり、観光協会や道の駅に町の情報が書かれた紙のパンフレットがあるじゃないですか。パンフレットの情報は充実してるんですが、webへ載っていないことがあると発見して、それを編集して掲載していました。」
とっとりずむの人気コンテンツの一つが、お店の『開店・閉店』情報。なんと新店オープンの情報は、行政に提出される『営業許可申請』やオープン前に募集される『バイト求人情報』を頼りに見つけてくるそう。情報発信は『書く』前に、旬な情報をいち早く『取りに行く』ことから始まっているんですね。
(取材は「webもり」の事務所でおこないました)
酒本:「今はホームページ制作会社のwebもりで平日は働きながら、とっとりずむの取材があれば都合を合わせたり、休みの土日を中心に運営をしています。僕以外に主婦の方を中心に3人の方が記事を書いてくれています。」
一時期は『鳥取を盛り上げたい!』と10人ほどのライターさんが所属していたそうですが、結果として『書くことが好き・得意』な人が長く続いているそう。何よりコツコツとした積み重ねが求められる情報発信は、好き・得意な人ほど『継続』が出来るのかもしれません。酒本さんは、もともと書くことが好きで、それを仕事にしていたんでしょうか?
『この先どうしよう』と迷った先に出会った、webメディア
酒本:「Facebookの過去投稿を見たら、学生時代にワンコインランチ特集を勝手にやっていたんですね。文章を書くこと自体は苦手なんですが、人に伝えることは好きだったんだなと思います。高校生のころからマジックをしていたので、人を楽しませたり、喜んでもらいたいって思いは強いですね。」
ただ現在に至るまでには、少し遠回りをしたと、当時を振り返りながら続けます。
酒本:「大学を卒業してから大阪で就職して、その後に鳥取にUターンしました。正直なところ、長男なので戻ろうとは思っていたんです。大阪で暮らしはじめて改めて気づいたのは、自分が大事にしたいライフスタイルでした。鳥取の実家はすぐ海が見える場所で、昔から考え事をするときは海を眺めることが好きだったんです。大阪だと、ちょっと一人になりたくてもまわりが騒がしかったり、近くの海水浴場は鳥取ほどキレイではないし。鳥取の海が見える環境、人が少ないからこそ静かでゆとりがある生活がいいなとおもって、帰ってくることを決めましたね。」
鳥取に戻ったあとも、すぐに『とっとりずむ』の運営をはじめるのではなく、イベント会社で働いたり、日本一周の旅に出たり、セブ島へエンジニア留学に行ったり、これからどう働いていこうかと迷っていた時期があったそう。
その後、縁あって大山町にあるシェアハウス−のまど間に住み始めた酒本さん。ここで、とっとりずむにつながる活動と出会いがありました。
酒本:「のまど間に住んでいた頃は、クラウドソーシングでウェブライターの仕事を受注して。文字単価0.5円くらいの、とりあえず書けがお金になるうような仕事をしていました。あまりに文字単価が低いので、書きすぎて腱鞘炎になってしまって(笑)大好きなマジックもできないじゃんと、もがいているときにブログ運営をしている人に出会ったんです。」
鳥取の情報がweb上に少ないという問題意識もあり、自らもブログメディアを運営しようと、2015年12月に鳥取の魅力発見サイト『とっとりずむ』を開設しました。
メディア運営を語るときの酒本さんは、とても楽しそう。迷うときがあってもとにかく行動をし続けたからこそ、『人を楽しませたいという思い』と『メディアというツール』が結びついたんだと感じます。
人が少ないからこそ、濃いつながりが力になる
『情報』が鍵を握る、webメディア。一見、人やスポットの少なさはデメリットにも感じますが、鳥取で運営するならではポイントはあるのでしょうか。
酒本:「人が少ない分、良くも悪くもつながりが濃くて、おもしろいことをしていたら、メディアに取り上げられやすい環境だと思いますね。とっとりずむも、立ち上げから半年で地元テレビ局さんに取り上げてもらったり、新聞社やテレビにも掲載してもらえました。『こんな情報を掲載してほしい』という問合せや口コミもたくさん寄せられるようになってきたので、地域密着でやるのもチャンスがあるなと感じています。」
(地元のメディアに取り上げられた時の様子)
酒本:「それから、読者の反応が直に見えるのは嬉しいですね。メディア運営者が、直接読者の方に会うって珍しいと思うんですが、とっとりずむは、家族も親戚も見ているし、『見てますよ』というリアルな声もたくさんいただいていて。これは、地域メディアならではのやりがいだと感じています。」
一方で、メディア運営ならではの大変なことはどんなことがあるんでしょうか…?
酒本:「ラーメン屋を掲載したときは、痛い思いをしましたね…。あるラーメン屋を"美味しい"と掲載していたら、ラーメン専門家から"美味しくない!"とコメントがあって、SNSがプチ炎上したことがありました。内容についての批判を聞くこともあるんですが、それだけ見てくれる人が増えたのかな、と受け止めているのと、ある新聞社の報道の方が『批判されてこそがメディアだ』と言っていたんですね。ある程度は、ポジティブ・ネガティブ双方の反応があってもいいのかなと思いますね。」
鳥取へUターン直後は、地元の友人も別のコミュニティへ入っていて寂しさを感じた事もあった酒本さん。でも『とっとりずむ』の活動であらゆる場所へ取材に出かけることで、地域おこし協力隊、行政の方、地元で商売をしている人、これまで全く接点のなかった人たちとつながるに連れて、鳥取での生活がどんどん楽しくなっていったそうです。
地元を離れても、外にいる人にしかできないことがある
『ローカルメディア』は、その土地に暮らしていないと運営が難しそうですが、『県外にいるからこそ、できることがある』と酒本さんは考えています。
酒本:「鳥取で暮らす僕たちができないことをもっと発信したいと思っていて、とっとりずむの読者は、県外比率の方が高いんですよね。なので例えば、県外にも鳥取にゆかりのあるお店があるので、その情報を掲載して、『鳥取のものを食べたい!』というときにそのお店へ足を運んでもらったり、食べてもっと興味を持ったら鳥取にいってみよう!と思ってくれる。そんなつながりを作れるように、県外の鳥取ゆかりのお店を紹介していきたいですね。」
鳥取が地元という人も、小さくても"縁"を感じている人は、ぜひ関わりを持ってほしいと話してくれました。そして、鳥取について、砂丘に大山に水木しげるロードというメジャーなスポットしか"知らない"人は、ぜひ『とっとりずむ』を見て、ディープな鳥取のおもしろさに触れてみてください。
酒本:「『とっとりずむ』には、鳥取をおもしろがるニッチな情報がたくさんあります。砂丘と聞くとラクダに乗れる、広いというイメージがありますが、サンドボードなどのアクティビティも充実しているんです。実際に体験した記事も掲載しているので、疑似体験ができるんですよね。見ているだけでも観光気分になっておもしろいと思うので、心惹かれるコンテンツがあったら、ぜひ実際に飛び込んでみてください。お待ちしています!」
とっとりずむ:https://tottorizumu.com/
酒本さんがゲストで登壇するイベントが、2月1日に大阪で開催されます。ぜひ足を運んでみてください。
つながり・とっとり@osaka:https://www.facebook.com/events/758936907848994/
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